ソレア
ソレア

数あるフラメンコの演目の中でも、とりわけ人気が高く、種類も多いもののひとつ、それがソレアだ。ソレア・デ・アルカラ、ソレア・デ・トリアーナ、ソレア・デ・カディス、ソレア・デ・ウトレーラ、ソレア・デ・フアニキ……地名や人名のついたソレアは、古今東西、あまた存在してきた。このソレア、正式には複数形でソレアレスと呼ぶ。標準スペイン語ではそれぞれ「ソレダー」「ソレダーデス」となる。その意味は「孤独」。複数形だと、「寂しい場所」という意味も生まれる。筆者手持ちの辞書には、感心なことにアンダルシア弁である「ソレア」「ソレアレス」も別項として載っている。
 では、ソレアは本当に「孤独」で「寂しい」曲なのだろうか。それだけなら、さまざまある12拍子系随一の人気を誇る曲になりえただろうか。

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フェデリコ・ガルシア・ロルカ
カフェ・デ・チニータス

詩人・劇作家、フェデリコ・ガルシア・ロルカ(1898~1936)が収集した『13のスペイン古謡』には、実にいろいろなキャラクターが登場する。恋に生きる男女の姿が、飾らない言葉で描かれている。
 もうひとつ、アンダルシアの古都グラナダ近郊に生まれたロルカにとって身近なものが、闘牛という文化。最近では動物愛護の観点からアンチ闘牛の動きも出ているようだが、アンダルシアやマドリッドでは今でも盛んに行われている。あの円形の闘牛場に足を踏み入れたときからそこにいる人間同士が共有する儀式めいた感覚には、独特のものがある。それに、雄々しく戦って散った闘牛は皆の称賛を浴び、すぐ食肉となるのだ。決して動物愛護の精神にもとるものではないと思うのだがいかがなものか。
 まあ闘牛の是非論はさておき、今回取り上げる『カフェ・デ・チニータス』の主役は、いわば花形をつとめる闘牛士だ。モデルのパキーロは実在の名闘牛士で、19世紀の前半活躍した人だった。そのパキーロが、カフフェ・デ・チニータスを訪れて……というのが、物語の背景になっている。

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ビジャンシーコ
アギランド(ビジャンシーコ)

1年を通して、スペインにはさまざまな宗教行事がある。三月のセマナ・サンタ(イースター)、続くフェリア、初聖体拝領祭、聖母マリアにまつわる一連の祭(巡礼祭、被昇天祭、無原罪の御宿り祭)……などなど。その最後を飾るのが、12月に控えるクリスマスだ。実際にはスペインを含めたカトリックの国の伝統では、翌年1月6日の「三賢人の日」、すなわち「公現節」までクリスマスシーズンが続く。この三賢人とは、メルキオール、バルタザール、カスパール。ベツレヘムの星を目にした彼らが東方から旅をし、聖母マリアとみどりごイエスのもとに辿り着いたのが1月6日だったのだという。彼らが贈り物として持参した黄金、乳香、没薬(もつやく)にちなみ、子どもたちは12月25日の朝でなく、1月6日にプレゼントをもらうのが古くからの習わしだった。なお、日本と違い、新年は文字通り「新しい年の始まり」に過ぎない。幸福を願う12粒のブドウを食べたり、祝宴をひらいたりと盛り上がりはするが、祝日なのはいわゆる元日のみ。2日からは普通に街が動き出す。

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ルンバ
ルンバ:ベルデ

この曲の人気を決定的なものにしたのが、カルロス・サウラ監督の『フラメンコ』のラストを飾るライブ・バージョン。こちらは当時スペイン国内で流行をみていたフラメンコ・ロックのスター、ケタマとのコラボレーションで、ケタマのメインボーカルであるアントニオ・カルモナとの掛け合いで唄っている。その軽やかなノリが、さらに多くのファンを獲得した。画面を埋め尽くして踊る少年少女の映像を記憶に留めている方もいらっしゃるだろう。マンサニータはその後も順調にヒットを飛ばしていくが、2004年、心臓発作のため48歳の若さで急逝する。サウラ監督の『フラメンコ・フラメンコ』にも「ベルデ」は、今度は幕開けの1曲として使われているが、やはりオリジナルの魅力には敵わない。

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ソレア・ポル・ブレリア
アマルゴのロマンセ

ロマンセとは、スペインに、というよりイベリア半島に古くから伝わる「物語歌」。無伴奏のものから、それこそ今日でいうソレアやブレリアなどの12拍子のリズムに乗せたものなど、スタイルはさまざまだ。

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ルンバ
ルンバ・フラメンカ

「海がわたしに踊りを教えたの……」そう言っていたカルメンは、生まれ育ったバルセロナを皮切りに、スペイン国内はもとより、アメリカ大陸にわたって名声を不動のものとしていった。その天賦の才により、時には現地の民謡をも、元の味わいを損なうことなく自然にフラメンコのコンパスに乗せて歌い踊ることができた。

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ファンダンゴ
アロスノのファンダンゴ

元々が民謡であるファンダンゴ・デ・ウエルバには実に多彩なバリエーションがある。
 いちばんわかりやすい区分は、地名を冠したパターンだ。いわゆる日本の「〜節(ぶし)」のようなもので、「ファンダンゴ・デ・〜」と呼ばれる地方的ファンダンゴは挙げれば限りなく出てくる。

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ルンバ
ルンバ:サルサモーラ

。タイトルは「サルサモーラ(野いちご)」。ちなみにmoraのつかないzarzaは「イバラ」の意味になる。このイースターの時期、スペインを含むキリスト教国のあちこちで人類の救済を願って掲げられる、イバラの冠をつけたキリスト像を思い描く方も多かろう。これにmora(クワの実、木いちご)がつくと、素朴な野いちごzarzamoraができあがる。

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セビジャーナス
セビジャーナス ケ・ノ・テ・キエラ

こちらもフラメンコのテーマとしておなじみ、禁じられた恋が登場する。ここで、confesorという、あまり耳慣れない単語が登場する。その意味は「聴罪司祭」。カトリックにおいて、懺悔を聞き届けてくれる専門の司祭だ。

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ティエント
ティエント

フラメンコというとどうしてもブレリアやアレグリアスのような12拍子が思い浮かぶが、2拍子、3拍子、4拍子、6拍子など豊富なバリエーションがあってこそ、フラメンコの楽しみも存在するというものだ。
 その中で、2拍子系の代表格といえば何といってもタンゴだろう。

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