カフェ・デ・チニータス

 詩人・劇作家、フェデリコ・ガルシア・ロルカ(1898~1936)が収集した『13のスペイン古謡』には、実にいろいろなキャラクターが登場する。恋に生きる男女の姿が、飾らない言葉で描かれている。
 もうひとつ、アンダルシアの古都グラナダ近郊に生まれたロルカにとって身近なものが、闘牛という文化。最近では動物愛護の観点からアンチ闘牛の動きも出ているようだが、アンダルシアやマドリッドでは今でも盛んに行われている。あの円形の闘牛場に足を踏み入れたときからそこにいる人間同士が共有する儀式めいた感覚には、独特のものがある。それに、雄々しく戦って散った闘牛は皆の称賛を浴び、すぐ食肉となるのだ。決して動物愛護の精神にもとるものではないと思うのだがいかがなものか。
 まあ闘牛の是非論はさておき、今回取り上げる『カフェ・デ・チニータス』の主役は、いわば花形をつとめる闘牛士だ。モデルのパキーロは実在の名闘牛士で、19世紀の前半活躍した人だった。そのパキーロが、カフフェ・デ・チニータスを訪れて……というのが、物語の背景になっている。

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