ルンバ・フラメンカ

 今回からしばらくは、20世紀のフラメンコ・シーンを火花のように駆け抜けたひとりのスターが残した曲を取り上げる。そのスターとは、カルメン・アマジャ。踊っても歌っても人並みはずれた才能の持主だった彼女は、50年という長くない人生を、常にステージの中央に立ち、スポットライトと喝采を浴びながら過ごした。
 「海がわたしに踊りを教えたの……」そう言っていたカルメンは、生まれ育ったバルセロナを皮切りに、スペイン国内はもとより、アメリカ大陸にわたって名声を不動のものとしていった。その天賦の才により、時には現地の民謡をも、元の味わいを損なうことなく自然にフラメンコのコンパスに乗せて歌い踊ることができた。たとえば、ペルーの舞曲トンデーロや、今も歌い継がれているキューバ起源のコロンビアーナなど。そしてもう1曲、ラテン起源の曲が、今回のテーマであるルンバ・フラメンカだ。ルンバという舞曲はもともとキューバにルーツがあるとされているが、カルメン・アマジャが歌ったこのルンバは、実は別のところにふるさとがある。その郷里を知るヒントは、中段のリフレインに表れる、cumbiambaという聞き慣れない(であろう)言葉に隠されている。タンゴやルンバほど広く知られていないが、中米コロンビアを代表する踊り、それがクンビアcumbiaだ。そしてcumbiambaというと、踊りそのものを指すほかに、クンビアを踊る場所、との意味も帯びる。このリフレイン部分の節回しは、クンビアの典型的なリズム刻みを持っているのだ。それがこのルンバに独自の個性と魅力を与えている。
 そのユニークさに加えてもうひとつ、このルンバを取り上げたのには、1番の半ばに表れる「ロシオ」という人名にも理由がある。折りしもスペインでは、「ロシオの聖母」のための巡礼祭が終わったところ。

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