アレグリアスその2
アレグリアスの意味するところは「喜び」。しかし以前にも紹介したように、単純な喜びだけではなく、人生の悲喜こもごもがそこには散りばめられている。とりわけ踊り用のアレグリアスの場合は、途中にシレンシオ(沈黙、静寂)と呼ばれる静かなパートが挟まれるのが伝統のスタイル。アレグリアスは基本的に長調だが、シレンシオの部分ではメロディーもしばしば短調になり、しっとりとした風情を醸し出す。一方これも踊りの場合、最後には快速調のブレリア・デ・カディスを伴うのが一般的。ひとつの曲の中で、人生のさまざまな場面を見るような変化が楽しめるのがアレグリアスの面白さとも言える。
セビジャーナス ポル・ラ・マニャーナ
以前にも、ロシオ・フラードがカルロス・サウラの映画『セビジャーナス』の中で歌った「「Lo tire al pozo(井戸に捨てたわ)」を取り上げた。このようにひとつひとつ独立したセビジャーナスは、これまで見てきたもの(「Pasa la vida」や「Mira a la cara」)のように、3連目のリフレインが共通してはいないし、そもそも4番までがセットでもない。したがって、好きなように組み合わせることができる反面、とりわけ踊りに使う場合は、どれを歌うかあらかじめギタリストに伝えておかないと、とっさにキーを合わせてもらえない可能性があるので多少の注意が必要だ。しかしこちらの形式のほうが、型にはまっていない、本来のセビジャーナスの楽しさが味わえると思うのだがいかがだろうか。
セビジャーナス・クラシカス・デ・オブレゴン
今回取り上げるのは、これまで紹介した踊り用の華やかなものと趣きを異にする、ピアノの弾き語りによるセビジャーナスだ。この11月に新作『J:ビヨンド・フラメンコ』が公開になるカルロス・サウラ監督が手がけた、初のフラメンコ・オムニバス映画『セビジャーナス』に収録されている。演奏しているのは、20世紀を代表するフラメンコ・ピアニストのひとりで数々のヒット曲を生み出したマヌエル・パレハ=オブレゴン。