アレグリアスその2

 昨年秋からスタートした講座『レトラと元唄(CD)から学ぶカンテ』。タンゴ、セビジャーナスと続き、5月からはアレグリアスを学んでいく。アレグリアスはこのコラムのいちばん最初でも取り上げているが、今回学ぶにあたり、改めて、よりまとまりのいい1曲を選んだ。それに際し、アレグリアスについてもう一度おさらいしておきたい。
 アレグリアスの意味するところは「喜び」。しかし以前にも紹介したように、単純な喜びだけではなく、人生の悲喜こもごもがそこには散りばめられている。とりわけ踊り用のアレグリアスの場合は、途中にシレンシオ(沈黙、静寂)と呼ばれる静かなパートが挟まれるのが伝統のスタイル。アレグリアスは基本的に長調だが、シレンシオの部分ではメロディーもしばしば短調になり、しっとりとした風情を醸し出す。一方これも踊りの場合、最後には快速調のブレリア・デ・カディスを伴うのが一般的。ひとつの曲の中で、人生のさまざまな場面を見るような変化が楽しめるのがアレグリアスの面白さとも言える。
 この、踊りの用のアレグリアスに比べると、カンテ用のアレグリアスには、シレンシオもなく、ブレリアもつかないのが普通だ。ある意味、クライマックスの築き方が難しいともいえる。それだけに、自分の内なるテンションを高めて歌いたいところだ。
 フラメンコの中でも人気の高いアレグリアスには、親類縁者も多い。ソレアやシギリージャを「ミ」の音を基調とする「ミの旋法」の花形とするなら、アレグリアスは長調の代表格。同じ長調の仲間には、カンティーニャス、カラコーレス、ミラブラ、ロメーラといった曲種がある。例外は、途中から短調に変わるカンティーニャス・デ・コルドバ。それぞれに持ち味があるが、共通しているのは心弾むような明るい風情。その風情がアレグリアスの、8音節4行詩+リフレインの中に凝縮されている。

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