10月13日発売、アントニオ・リサーナの新譜「ヴィシュッダ」(’23)。カンテ&サックス二刀流の真骨頂がここに!

“ヴィシュッダを求めて

 去る10月13日発売、カディス県サン・フェルナンド出身の二刀流(カンタオール&サックス奏者)、アントニオ・リサーナのソロ第5作目は「ヴィシュッダ」(‘23)! このタイトルはヒンドゥー教でいう第5チャクラ(=エネルギーの輪)で「プレッサ(純粋)」を意味し、持ち前の二刀流をさらに発展させ、よりディープに踏み込んだ「フラメンコ」作品となっています。

 今週ご紹介のアルバム冒頭曲「カミーノ」は、タンゴ・フラメンコのパルマに軽快なサパテアードを絡ませながら、本人演奏のジャズサックスのイントロでスタート。アントニオのフュージョンの特徴は、フラメンコの多彩な曲種のコンパス(リズム)をベースに、メインメロディを構築していくこと。これは生粋のフラメンコ・アーティストでなければできない高等テクで、さらに中盤で自ら王道のカンテを歌うことで、ジャズ・フュージョンから一気にプーロ・フラメンコへ揺り戻す、壮大なダイナミック・レンジの往来を可能にしているわけです。

 カンテはぐっとトラディショナルに唄うアントニオですが、レトラも本人作詞のオリジナル。②は自身の二刀流の行く末を暗示するようなプライベートな内容を韻律に当てはめ、聴き手を引き込んでいきます。恐るべきマルチな才能ですが、それを決して鼻に掛けない、リラックスした庶民的な雰囲気も、地元の先輩カマロンやパコに共通する、カディス圏のスターの特徴なのかもしれません。

コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。 → . 未入会の方→ 倶楽部のご案内

コメントを残す