ヘリネルドと姫君の秘愛
ヘレスのカンテ・ヒターノ名門アグヘータ一族が得意とした持ち歌の一つに、「ロマンセ」がありました。中世ごろからスペイン全域に伝わる、さまざまなスタイルの物語歌で、現在のフラメンコ界では巨匠アントニオ・マイレーナが広めたソレア・ポル・ブレリア調のスタイルが、バイレ伴唱も含め一般に流布しています。もともとは南アンダルシアのヒターノの間で歌われていた、無伴奏の素朴なアカペラが原点の一つと考えられ、ディエゴの父、アグヘータ・エル・ビエホ(1908~1976)や、プエルト・デ・サンタ・マリアのエル・ネグロ・デル・プエルト(1913~1995)の雄渾な演唱が、好事家の間では深くマニアックに愛されてきました。