ルンバ:ソン・ソン・セラ

カルメン・アマジャのルンバは、コロンビアのクンビアを取り入れるなど、ルンバ・フラメンカと言いながらむしろラテン色の濃いものだった。それに対して今回のものは、スペインの一般大衆が情熱を傾けるカンシオン──歌謡曲の部類に属している。
 フラメンコの世界にもカンシオン・ポル・ブレリア(ブレリア仕立ての歌謡曲)という1ジャンルが存在するなど、カンシオンの人気はとにかく高い。人気の歌謡曲は、何にでも生まれ変わる。ブレリア、タンゴ、そしてルンバ。非常にフラメンコらしくなるケースもあれば、もともとの歌謡曲のカラーをしっかり残す場合もある。今回の『ソン・ソン・セラ』は、後者の典型だ。
 最初この曲名を聴いた人の多くは、「え? 『ケ・セラ・セラ』じゃないの?」と問い返すだろう。確かにスペイン語的に正しいのは、ミュージカルナンバーとしても有名な「Qué será será」。意味は「なるようになるさ」。ところが、「Son son será」では意味が通じない。しかしルンバのリズムに乗せてみると、Son son seráは実にすんなり馴染むのだ。この手のルンバにおいて大事なのは、語呂、そしてノリなのである。
 この『Son son será』を含めてルンバの名曲がいろいろと生まれたのは、1970年代。『Son son será』も1974年、マノロ・デ・ベガとそのグループが歌って大ヒットさせた。1942年バジャドリッドに生まれたマノロ・ラファエル・デ・ベガ・アロンソは当時の人気カンタオールの芸名を借り「フォスフォリート・デ・バジャドリッド」と名乗った。当初はマリエンマの伴唱をつとめるなどカンテの道を歩んでいたが、やがてその道は、コメディアンとして大きく花開く。そのひとつの産物が『Son son será』だ。

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