チャノ・ロバートに捧ぐ
猛暑がやわらいだ、涼しい秋の月夜に相応しい一曲に、カディスの名手チャノ・ロバート(1927~2009)のカンシオン「不完全なメロディ(Melodía incompleta)」をお送りします。
もともとアントニオ・エル・バイラリンやマティルデ・コラルといった、スターダンサーの伴唱者として長年キャリアを積んでいただけに、レパートリーの広さには定評がありました。カディス定番のアレグリアス、タンギージョは当然、ソレア、シギリージャといったカンテ・ホンド、物売り歌のプレゴンまで変幻自在。本作収録のオムニバス盤「20年なんてあっという間(Que 20 años no es nada)」(‘00)には、ペドロ・アルモドバル監督作品でエストレージャ・モレンテが歌った「ボルベール」を筆頭に、懐メロや異ジャンルのフラメンコ化を多才な技術を駆使して見事にこなしています。