
女王入魂のアルテ
十数年前に紅白歌合戦で偶然聴き、思わず涙した美輪明宏の「ヨイトマケの唄」を、このロシオ・フラードの「戻れるなら(Qué no daría yo)」を耳にして、久々に思い出しました。両者とも過去の忘れえぬ情景がテーマになっており、当時40代後半のロシオが、輝ける若き日々を渇望しながらも、決して〝戻らない〟哀しみを絶唱するシーンは胸を強く揺さぶります。若さと美貌で鳴らした時代はいつか終わる、終わってしまったのだ、でもだから? 大スターながら腰を折って全身全霊を尽くす唄いぶり、それを憧憬と共感溢れるまなざしで見つめる若きパルメーラの姿に、フラメンコ的な美意識がきわめて濃密に凝縮されています。