ドン・E・ポ―レン著/青木和美訳「ひとつの生きかた(原題:A WAY OF LIFE)」(‘09)

モロン黄金時描く

 ディエゴ・デル・ガストール、マノリート・デ・マリア、フェルナンディージョ……伝説的な超個性派が躍動する、モロン・デ・ラ・フロンテーラでの濃密なフラメンコ・ドキュメント「A WAY OF LIFE」(ドン・E・ポーレン著/初版1980年)はご存じでしょうか? 筆者は英語版原書を所有していましたが、先日図書館で見つけた稀少な邦訳「ひとつの生きかた」(青木和美訳/初版2009年)を初めて読み、その面白さに今さらですが、非常に強い感銘を受けました。アンダルシアのエステポナ在住で、フラメンコギターを弾く青木氏の翻訳が素晴らしく、八方破れで人間臭いアルティスタの様子や、繊細かつ微妙な対人関係のニュアンスまで、とにかく流暢でコクのあるリズミカルな語り口が魅力的です。

 著者のドン・ポーレン氏は1929年アメリカ・ミネソタ生まれ(2007年没)、筋金入りのプーロ派アフィシオナードでギター弾き。モロンを象徴する名ギタリスト、ディエゴ・デル・ガストールとの知己を契機に、同地に旧農場を改築した「フラメンコ・センター」を開設。おもに母国アメリカ合衆国からフラメンコファンを滞在客として呼び寄せ、地元・近隣アルティスタのフエルガで歓待するという前代未聞の宿泊ツアーを、1966年からディエゴが亡くなる1973年まで展開しました。アルティスタではない米国人のポーレン氏が、本場アンダルシアでフラメンコを糧に何とか暮らすため、知恵を絞って考え出した仕事でもあったのです。

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