中谷伸一の週刊レトラの世界
148.天国への旅(タンゴ)

ボヘミアンの言霊

 近年のスペイン発フラメンコ本の中で、一二を争う面白さだったのが「知ったことか!(¡Qué sabe nadie!)」(エドゥアルド・J・パストール著/2024年7月初版)です。約十年前、60歳で早世したヘレスのカリスマ、エル・トルタ(1953~2013)の〝自伝〟ですが、あのガラッぱちで奔放な、それでいて深い知性ある言葉遣いに魅了されます。同じく無軌道で破天荒な生涯を送った親友ルイス・デ・ラ・ピカ(1951~1999)を語るくだりを、チラッとご紹介しましょう。

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