タンゴ

カンテ指南、アレグリアスに続き今回と次回は、やはり非常にポピュラーな曲種のひとつであるタンゴを取り上げる。アレグリアスを12拍子系の代表選手だとするなら、タンゴは紛れもなく、2拍子系の曲種のトップに君臨する。

タンゴというと、アルゼンチン・タンゴのせつせつと情念に訴えかける踊りと節回しを思い出す方もあるだろう。しかし、タンゴ・フラメンコのほうはよりすっきり端麗に、アンダルシアの空のような乾いたムードが持ち味だ。もっとも、このタンゴの生まれ故郷はアンダルシアではなく、かつてスペインが領地としていた中米。19世紀にスペイン全土で隆盛したカフェ・カンタンテで流行したことが、タンゴが人気を呼ぶ一因となった。その意味では、アルゼンチン・タンゴと遠い親戚と言えなくもない。そうしたラテン的なルーツの名残りは、リズムの取り方に見られる。2拍子の曲種のパルマ(手拍子)を打つ場合、2拍目と4拍目を強めに打つことが多いのだが、タンゴ・フラメンコはアルゼンチン・タンゴと同様、2拍目にいちばん強いアクセントが来ている。
タンゴ・フラメンコのバリエーションは豊かだ。タンゴ・デ・カディス、タンゴ・デ・グラナダ、タンゴ・エストレメーニョのように地名を冠したもの。あるいはタンゴ・デ・レポンパ、タンゴ・デル・ピジャージョ(タンゴ・デ・マラガ)、タンゴ・デル・ティティのように歌い手の名前で知られるもの。または「ジプシー調の」を意味するタンゴ・ヒターノ(カナステーロ)など、曲の特徴を名前にしたもの。テンポやリズムの刻み方にそれぞれの個性の差はあるが、ティエント、タラント、ファルーカ、サンブラ、マリアーナ、ガロティン、コロンビアーナやルンバも、いわば“タンゴ族”だ。
2拍子系ならではのキレの良さ、軽やかさを、タンゴを通じて味わってほしい。

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